2018年8月26日日曜日

雲水日記5

入門14日目。初めての寝ずの番。
入門してから初めて檀家さんが亡くなり、終日、緊張感に包まれていた日。

4月6日
昨日檀家さんが亡くなったと連絡が入り、お通夜と葬儀を道場で行うことになった。
方丈にご遺体が安置されたので、一晩中、ロウソクと線香の火を絶やさないように見張らなければならない。これを寝ずの番といって、新到の仕事の一つ。
方丈は堂内よりも暖かく、その日に限っては同夏だけで寝るので気が楽。

亡くなった方は若い頃から長年、道場に尽くしてこられた方のようで、父も40年前にお世話になった方のようだ。それだけに、老師の気合いの入り方が違い、雲水の先輩方も非常に気が張っていた。
今日はお通夜、明日は葬儀だけど、まだ式の流れや動きが理解できていないため、出頭することができない。

今日でちょうど2週間。
一日一日は長いが、気づけばあっという間の2週間。

【雲水用語】
寝ずの番(ねずのばん):ご遺体と同じ部屋で、一晩中、ロウソクと線香の火を絶やさないように番をすること。
方丈(ほうじょう):本堂のこと。
堂内(どうない):雲水が寝たり坐禅したりする修行するための建物。
同夏(どうげ):同じ夏(げ)に入門した同僚のこと。
夏(げ):僧堂での生活は半年が一単位となっており、これを一夏(いちげ)という。

2018年8月21日火曜日

雲水日記4

入門9日目。公案&托鉢デビュー。
いよいよ修行が始まったと実感した日。

4月1日
老師から公案を頂戴した。
最初の公案は、「独参場に入る足はどちらの足か?」という公案だ。
あくまでも禅的にどうなのかを考えなければいけない。
1回目「左足」でダメ、2回目「右足」でもダメ。
”無い足を使う”ってことか?

今日は托鉢デビュー。雨だったので合羽を着て市街地を回った。
「ほぉー」と腹の底から声を出し、お宅の前で四弘誓願というお経を唱える。
「雨の中、お疲れ様です。」「修行頑張って下さい。」「ありがとうございます。」と言葉をかけて下さったり、自分に向けて手を合わせられたりする人もいて、道場内では味わえない達成感があった。托鉢が好きになった。

※補足:臨済宗の修行は、公案が特徴的である。夏目漱石が鎌倉・円覚寺の老師から、「父母未生以前本来の面目」という公案を与えられ、禅問答したことは有名な話である。

【雲水用語】
公案(こうあん):禅の精神を究明するための問い。老師から頂戴し、老師と禅問答する。
独参場(どくさんば):老師と禅問答をやり取りする部屋。
托鉢(たくはつ):お宅に向かってお経を唱えて、金銭やお米などの施しを受けて回ること。
四弘誓願(しぐせいがん):仏教を信ずる者としての基本的な誓い。

2018年8月15日水曜日

雲水日記3

入門6日目。ようやく雲水生活が始まった日。

3月29日
ようやく入門が認められて雲水生活がスタートした。

隠寮相見があり、老師から
「数ある僧堂がある中でうちを選んで頂いたことに大変感謝申し上げます。今までの人生や経験を全て忘れてまっさらにするように。これまでのルールとは大きく違って戸惑うことが多いと思うけど、素直に謙虚になって修行に励んでもらいたい。奥さんのことを忘れるのは辛いことかもしれないけど、修行に集中して立派な僧侶になることが奥さんのためになると思って頑張ってもらいたい。」
というお言葉を頂戴した。

その後、荷物の検単があり、家族や今までの思い出写真、防寒用のスパッツ、家族に書こうと持ち込んだ手紙や辞書など、修行に関係ないものは全て没収された。写真だけは勘弁して下さい、とお願いしたけど、認めてもらえなかった。
そして、僧堂の伝統?!、新到いびりという謎の嫌がらせが一日続く。。。
坊さんがやることとは思えない!非道である!!

でも、お経のテストに合格すれば、ケータイが持てるようになる。
1ヶ月後の合格を目指して、がむしゃらに頑張る!

※補足:檀家さんがかなり多い寺であるため、宅経も多く外出する機会が多い。
そのため、檀家さんと連絡を取る必要があることから、ケータイを持つルールになっている。

【雲水用語】
・隠寮相見(いんりょうしょうけん):老師との初顔合わせの儀式で、住職の部屋に挨拶に伺うこと
・検単(けんたん):荷物の点検
・新到(しんとう):新人雲水
・宅経(たくぎょう):檀家さんのお宅に訪問して読経すること